本日は、現代ロシアの礎となった国家、「モスクワ大公国」をご紹介します!
モスクワ大公国(Великое княжество Московское)
モスクワ大公国の概要
モスクワ大公国は1263年~1547年にかけて、モスクワを中心として存在とした大公国です。1547年10月22日に当時の大公だったイヴァン4世がツァーリ(Царь・皇帝)として正式に戴冠し、ロシア・ツァーリ国を建国したため、発展的に消滅しました。
1460年代の人口はおよそ300万人と推定されています。
当初は「公(Князь)」が統治する「公国(Княжество)」でしたが、1389年のヴァシリー1世以降、君主が「大公(Великий князь)」を正式に名乗るようになり、「大公国(Великое княжество)」となりました。(大公国となったタイミングについては諸説あります。)
モスクワ大公国の歴史
前史
モスクワ公国が成立する以前、現在のロシアやウクライナの地には、「○○公国」と名がついたルーシ人(ロシア人やウクライナ人の祖先)の国々が群雄割拠していました。
ルーシ諸国がお互いに争っている間に、東方ではモンゴル帝国が勢力を急拡大します。結局、ルーシ諸国は1237~1240年にかけて、ほとんどがモンゴル帝国のバトゥの軍勢に征服されました。
モンゴル帝国は直後の1243年に分裂しますが、ルーシ諸国は分裂したうちの1つ、キプチャク・ハン国(ジョチ・ウルス)の支配下に入りました。
このキプチャク・ハン国の支配は(ロシア人の視点からは)とても過酷で屈辱的なものであったため、「タタールのくびき」と呼ばれています。
そのような時代に成立したのがモスクワ公国(のちのモスクワ大公国)です。
成立と発展
モスクワ公国は、キプチャク・ハン国支配下ウラジミール大公のアレクサンドル・ネフスキーの死後、末子のダニール・アレクサンドロヴィチにモスクワ一帯が相続され、1つの公国として1263年に成立しました。
ダニールは周辺への領土拡大を進める一方、支配者のキプチャク・ハン国には臣従の姿勢を貫きました。
その後も、モスクワ公国は周辺への領土拡大を進め力を蓄える一方、キプチャク・ハン国から各地への徴税権を請け負ったり、キプチャク・ハン国に対する反乱に鎮圧部隊として活躍したりするなど、キプチャク・ハン国支配下の優等生として振る舞いました。
領土を拡大し力を蓄えたモスクワ公国は、13世紀終盤~14世紀前半までに「モスクワ大公国」と呼ばれるようになります。
そしてついに宗主国であるキプチャク・ハン国に反旗を翻します。
1380年クリコヴォの戦いが勃発。モスクワ大公国は、キプチャク・ハン国やその味方の諸国を打ち破りました。
この戦いはルーシ諸国がはじめて宗主国のキプチャク・ハン国に打ち勝った戦いとして、ロシア史の中では伝説的な戦いとなっています。
しかし、この戦いの後1382年にキプチャク・ハン国はモスクワ大公国に対して報復戦争を行い、モスクワ大公国は一時的に弱体化。キプチャク・ハン国への貢納もまだ続けられることとなりました。
キプチャク・ハン国(モンゴル)の支配からの独立~「ロシア」へ
キプチャク・ハン国の反撃を受け一時的に弱体化したモスクワ大公国ですが、すぐに勢力を盛り返し、1392年にはニジニ・ノヴゴロド公国などを併合。
1462年、イヴァン3世が大公に即位するとノヴゴロド共和国などを併合し、ロシア統一に向けた動きが加速。一方のキプチャク・ハン国は一部の国々が分裂し弱体化が始まります。
1480年、イヴァン3世はキプチャク・ハン国への貢納を拒否。キプチャク・ハン国は軍勢を差し向け、ウグラ河畔でモスクワ大公国軍とキプチャク・ハン国軍は対峙します。
しかしキプチャク・ハン国軍はほとんど戦闘らしい戦闘を行わないうちに撤退。モスクワ大公国の勝利となり、ついにキプチャク・ハン国(モンゴル)の支配下から脱しました。
また、このウグラ河畔の戦い前の1472年に、イヴァン3世はオスマン帝国によって滅ぼされたビザンツ帝国皇帝の姪ソフィアと結婚し、その後継国家として国の権威を上げていました。
ウグラ河畔の戦いの後、ヴァシリー3世の時代(1505~1533)にはロシアの統一をほぼ達成。
1547年にはモスクワ大公のイヴァン4世が、ロシアのツァーリ(Царь・皇帝)として正式に戴冠し、「ロシア・ツァーリ国(Царство Русское)」が成立。モスクワ大公国の歴史はここで幕を閉じました。
ロシア・ツァーリ国は、その後周辺各国やシベリアへの領土拡大を行い、ロシア帝国へと発展していきます。
おわりに
以上、「モスクワ大公国」について解説を行いました。キプチャク・ハン国(モンゴル)の支配から自立し、大国ロシアへの礎となったロシア史上欠かせない国です。
受験にもここで紹介した内容の一部がでるかもしれませんね。
それでは~